昨年、電通が新会社を設立して早期退職者と業務委託契約を結ぶ
というニュースが話題になりました。
結果として、全社員の3%に当たる約230人が募集に応じて退職を
したそうです。
しかし、退職した社員たちは電通が設立した新会社と最長で
10年間の業務委託契約を結び、その子会社が紹介する仕事を
請け負っています。
契約期間中は電通在職時の給与の約5割にあたる固定報酬のほか、
受託した事業の収益に応じた成果報酬も得られるとのこと。
さらに、電通は元社員が独自に立ち上げた事業の協業なども
行うようです。
私はこの新聞記事を読んで、
「これこそが新しい時代の会社と社員のあるべき姿だ!」
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と思いました。
こうした仕組みは米国などでは一般的で、「アルムナイ」と
呼ばれています。
「アルムナイ」とは、英語で卒業生を意味する言葉です。
ですから、「アルムナイネットワーク」というのは元社員の
ネットワークということになります。
終身雇用が標準的な日本では、自己都合などで退職した社員は
「裏切り者」扱いされることが少なくありませんでした。
しかし、ビジネス環境が劇的に変化している現在においては、
優秀な人材と退職後も結びつき、協業するメリットの方が
大きくなっているようです。
このような仕組みで有名なのは、リクルートですね。
「元リクルート」という人たちが、さまざまな業界で活躍して、
お互いに協業してビジネスをしています。
ただ、これはあくまでもリクルートの社風がそうさせている
のであって、会社が仕組みとして積極的にアルムナイを活用
しているわけではないと思います。
そういう意味で、今回の電通の試みというのはかなり戦略的
だと感じています。
三井物産でも、「元物産会」というアルムナイ組織が活発に
活動しているようです。
では、これは大企業だからできる仕組みなのでしょうか?
私は、
中小企業においても、アルムナイを活用できる、
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中小企業だからこそ、アルムナイを積極的に活用すべき
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だと考えています。
たとえば、当社でも退職した元社員と業務委託契約を結んで
引き続き仕事をしてもらっています。
それは、元社員からそのような申し出があったからです。
彼にはやりたい仕事があり、当社に1社専属で雇用される
ことに不自由を感じて、業務委託契約を希望したのだと
思っています。
当社にとって彼が退職したことは大きな痛手でしたが、
引き続き業務委託契約で仕事をしてもらっていますので、
ビジネス上の問題はまったく生じておりません。
むしろ、私としても依頼する業務を厳選するようになった
ので、お互いに業務効率が良くなったように感じています。
もちろん、業務委託契約には問題点もあります。
会社からすれば時間拘束や指揮命令をすることができませんし、
元社員からすれば将来にわたってずっと収入が保証されている
わけではありませんからね。
しかし、これからの時代は
1社だけに雇用されるということのリスク
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も顕在化しています。
今回のコロナショックのようなことがあると、ある日突然に
失業者になることだってあり得るのです。
だからこそ、「1社だけに雇用されない働き方」というのも
選択肢のひとつになってくると考えています。
そうなると、
私たち社労士もこれからは「雇用」だけでなく、
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「業務委託契約」で働く人たち(個人事業主・フリーランス)
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を支援するための知識やノウハウを身につけるが必要がある
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と思っています。
それが、「時代の変化に対応する」ということなのです。