昨年度から、助成金に「生産性要件」が本格的に導入されるように
なっています。
たとえば、キャリアアップ助成金の正社員化コースの場合、
生産性要件を満たすことによって
助成金の受給額が57万円 → 72万円に増える
というメリットがあります。
あるいは、「人材確保等支援助成金(人材評価改善等助成コース)」
のように、生産性要件を満たすことが助成金を受給する要件になって
いるものもあります。
しかし、助成金ビジネスをしている社労士で、顧客に対してこの
「生産性要件」の説明をしている人は殆どいません。
その理由は、「決算書が読めない」からです。
「生産性」とは、従業員1人あたりの付加価値のことであり、助成金
においては以下の計算式で求めることになっています。
生産性 = 付加価値 ÷ 雇用保険被保険者数
助成金なので、分母が「従業員」ではなく「雇用保険被保険者」に
置き換えられていますが、基本的な考え方は同じです。
また、「付加価値」については以下のように定義されています。
付加価値 =
営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課
このようにして、「雇用保険被保険者1人あたりの付加価値」として
計算された「生産性」が、3年間で6%(1年あたり2%)アップすれば、
助成金が加算される仕組みになっています。
この「生産性」を計算するために、行政では「生産性用件算定シート」
を用意しているのですが、このシートを使って計算するためには決算書
の知識が必要になります。
なぜなら、決算書のあちこちから数字を拾ってこなければならない
からです。
たとえば、「人件費」といっても、損益計算書(PL)に記載されている
ものだけではありません。
製造業や建設業であれば、売上原価の中に含まれている「人件費」も
対象になりますので、それは「製造原価報告書(明細書)」などから
拾ってくる必要があります。
また、損益計算書(PL)に計上している「人件費」であっても、
従業員の「退職金」や「役員報酬」は含めてはいけないことになって
います。
さらに、決算書だけでは把握できない勘定科目については「総勘定元帳」
によって確認しなければならないケースもあります。
以上のことから、助成金の生産性要件について顧客に説明するためには、
ある程度の決算書の知識が必要になるのです。
だから、生産性要件について説明をしていない社労士が多いのですが、
「プロの仕事」として本当にそれで良いのでしょうか?
その顧客が本当は生産性要件を満たしていたとしたら、あなたは顧客に
「損害」を与えたことになりますよ。
キャリアアップ助成金の対象者が3名いる会社の場合、
(72万円ー57万円)×3名 = 45万円
の損害を賠償しなければならないリスクを抱えることになるのです。
だから、助成金ビジネスをやるのであれば、これからは決算書が読める
ことが必須の条件になると、私は考えています。
だとしたら、
『決算書の勉強が必要なら、助成金ビジネスからは撤退する』
そのように考える人がいても仕方がないかもしれません。
しかし、これはある意味で「大きなチャンス」でもあるのです。
なぜなら、社労士であっても顧客から決算書を入手することができる
ようになるからです。
『助成金の生産性要件をチェックするので決算書を見せて下さい』
このように話をすれば、決算書は簡単にもらえるはずです。
問題は、そこからどのようにビジネス化を図るかですが・・・。
ただ、助成金をテーマにして社長と「経営」の話ができることは
確かです。
あなたは、顧客に対して「生産性要件」の説明をしていますか?